クルーズレポート
  
個人主義的レポート
Silver Wind
シルバーウインド
スエズ運河通過&エジプト・ヨルダン周遊クルーズ
2009年11月
 
 
成田からエジプト航空でカイロへ、そして車で走ること3時間、ポートサイドの
雑踏の中にシルバーウインドは佇んでいました。
ラグジュアリークラス、最高峰のクルーズ船と呼ばれるシルバーシー。せかいのクルーズファンを魅了しています。今回のコースはポートサイドから出港、スエズ運河を通過して、エジプトのシャムエルシェイク、ヨルダンのアカバからサファーガへの
至極の6日間。きっと、あっという間に終わってしまうことでしょう。

夕方になると、一人二人とバーに人が集まってきます。シルバーシーはオールインクルーシブだから乗ってしまえばほとんどお金がかからない船。
でもこの船客たちは、そんなことを考えているのではなく、ただリラックスしておいしい酒をいただき、ディナーへと流れる時間を楽しんでいるだけなのです。
 この船には、大型船のような奇抜なアイデア満載のパブリックスペースなどは皆無、その代わりに誰もがゆったりとした気分になれるオーソドックスなバーやダイニングが用意されています。
 シルバーウインドは、17000トン、船客296名の小型船。 ひたすら大型化が進む現代のクルーズにおいては、こういった小型船の船旅はとても贅沢なものになってしまいました。
 今の船は大きくなりすぎた。クルーも落ち着いた心のこもったサービスが提供できて、船客同士もほどよい距離感から言葉を交わしたりして。それがとてもほっとするのです。
 シルバーシーには、最高のシャンパーニュ、シガー、スピリットなどが用意されていますが、ただ身をゆだねるだけで”違い”を感じる船、”品格”を感じる船という気がします。
最初の寄港地、シャムエルシェイク。
うわぁー、古い! ボロイ! 何だこの船は?
クリスティナクルーズ?
帰国後、調べてみました。
さすが世界の艦船、「2009-2010世界のクルーズ客船」に載っていました。
1960年就航
4295トン
本社:フィンランド
ちゃんとお客さんが乗っています。
なんで、こんな古い船に乗るのか?

メインダイニング。
他の船客と相席になることはありません。
ワイン、食事ともに、メニューにじっくり目を通して、本当に食べたいものを遠慮なく注文できます。
お陰で、夫婦でじっくりと味わって食事を楽しむことができました。
ダイニングにまつわる話をある方から聞いたことがあります。それは、「名船の条件は、ワンシーティングのダイニングを持っていること。」その意味はお解かりでしょうか? 最近の船は、ダイニングは2回制が多いです。それはダイニングのスペースを小さくして、2回に分けて使うのですが、1回目の人は、船客同士のおしゃべりが弾んで食事が長引くと、ウェイターから「そろそろ、、、」と促されることがあります。 そんな船客に失礼な構造のダイニングを持つ船は、とても名船とは呼べない、という理由。昔、そんな優雅な時代がありました。 今も数は少ないですが、ワンシーティングの船は残っています。
シルバーウインドは、ワンシーティングとは謳っていませんが、ディナーに2時間以上かかっても「そろそろ、、、」などと野暮に促されることはありません。
 毎晩、高級食材をふんだんに使ったディナーが用意されていますが、悲しいかな、食べなれていないという現実。でもせっかくだから、存分に楽しむことにしました。
ディナーの後は、プールサイドで映画鑑賞。
マイケルダグラスが出ているエジプトを題材にした映画、(タイトルはなんだったかなぁ?)
少し肌寒いのですが、ブランケットにくるまって見入ってしまいました。
私にとって、船の中で居心地の良い場所は、こんな本に囲まれたライブラリだったりします。ふだん読まない英字新聞をちょっとがんばって読んで、世間の出来事をチェック。すると、「ちょっと、その新聞お借りしていいですか?」といった言葉のやり取りがあって、おしゃべりがはじまったりして。
乾ききった土地とエメラルドグリーンの海、ちょっと見たことがない海の色。11月なのに気温はじりじりと上昇。
それにしても、この船の船客は全員”ダラダラ”しています。
プールサイドで日光浴したり、本を読んだり、おしゃべりをしたり。。。。
でもそんな時間がすごく心地よかったりします。
 ランチ時、メインダイニングにゆけばフルコースが、ビュッフェにゆけばイタリアンビュッフェが用意されているにもかかわらず、プールサイドでハンバーガーと生ビールをいただくということが、逆にすごく贅沢な気分になります。
 しかし、シルバーシーでハンバーガーを注文すると「お肉の焼加減は?」と聞いてくれます。さすがシルバーシー、と変なところで感心しました。


シルバーウインドには、極上のスペシャリティレストランがあります。
好みのワインを選ぶと、それにあわせたメニューがいただけるのです。
そう、そう、シルバーシーのオフィシャルシャンパーニュはポメリーと聞いてきたのですが、なんと乗船日にキャビンにセットされていたのは「ドラピエ」。ドラピエといえば、カンパニー・デュ・ポナンで始めて飲んだシャンパーニュ、その独特な口あたりでとても好きになりました。 そのドラピエをまさかシルバーシーで飲めるとは、しかも飲み放題。(この辺が下品、でも本音。)

写真のお皿は、上品なポーションの前菜。向かって右の三角の皿はカエルの足。少しギョッとするもなかなかの美味。
このあと、フォアグラのソテー、ラムチョップの香草焼と続きます。
それらやけどしそうに熱々の皿をウェイターが素手で持ってきます。
テーブルに置くや否や、日本語で言うところの「あっつっ!」って感じ。
これじゃ拷問ですよ。 厳しい仕事だ。

それにしても、なんだ、この旨さは! もう洋上のディナーとしては異次元としか言いようがない。 



食後の紅茶。 たくさんの種類から選ぶとご覧のように丁寧に作ってくれました。
このレストランでのお食事そのものが、ひとつのエンターティメントでもあります。

フォーマルディナーの日、装いがタキシードやスーツであるものの、やっぱり夕方になればいつものようにバーに男達が一人二人と現れます。
「今日は何にしようかなぁ?」と酒を選んでるとき、なぜだかすごく幸せな気分になります。

シアターで行われるキャプテン主催のウェルカムパーティ。
これも船旅の伝統的なシーン。

今回のクルーズでいちばん行ってみたかったところ、ヨルダンのペトラ遺跡。
数年前、クリスタルクルーズの英語版の分厚いパンフレットを見て発見、それ以来、いつか行ってみたいなぁ、と。

それにしても私の写真は下手だ。
これじゃ、ペトラの凄さは全然伝わらない。
実物はもっと感動します。そしてもっと美しい。
我が船は、旅行中の我が家。
寄港地観光から船に戻ると、キャビンに明かりが灯っていて、ほっとします。
ナイルのほとり
6日目の朝、エジプト・サファーガでシルバーウインドを下船。至極の時は、あっという間に過ぎ去ってしまいました。
サファーガから手配しておいた専用車で走ること3時間、ルクソールの街に到着。乾ききった土地だけど、ナイル川のほとりはサトウキビ畑が広がります。、水というナイル川からの恵みを受けて育っているのでしょう。ロバの背中に荷を乗せて運ぶ人、その間を走って、ルクソールのホテルに到着。
豊かな水量のナイル川は、ゆっくりと静に流れていました。

ルクソールから国内線で1時間、この旅のスタート地点だったカイロに戻ってきました。
カイロの印象、一言で言えば”茶色の街”。そしてよくわからないのは、家々の屋根から鉄の支柱が突き出たままで建築途中のような建物がとても多いこと。

巨大なピラミッドがあって、雑踏の市場があって、交通マナーも最悪。
とても自分達では観光は出来そうにありません。

今回の旅、ランドの部分はすべてエジプトのガイドさんが案内してくれました。
いろんな観光名所のチケット購入や、移動、そして各地でのわかりやすい説明、
とてもお世話になりました。

シルバーウインドで行くスエズ運河通過とヨルダンクルーズは、
あっという間に終わってしまいました。
一時、一流のモノ・食事・空間に囲まれて、この上ない心地いい時間を過ごすことが出来ました。そしてやっぱり小型船はほっとします。
シルバーシーに乗ると「ラグジュアリークラスというのは実在する」と実感します。
船会社が目指す水準、船客が求める水準が、はっきりと違うのです。
ラグジュアリーマーケットにおけるシルバーシーのブランド力は群を抜いています。その洗練されたセンスとデザイン性は、乗船前に届けられるチケットから、バーでウィスキーを飲んだ時のマドラーにいたるまで徹底されています。

またいつか、この船にたどり着きたいものです。


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