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個人主義的レポート
SeaDream I
シードリームT (シードリーム・ヨットクラブ)
ローマ〜コリント運河通過〜アテネ
2013年5月
 
ローマの街は曇り空だったのに、1時間半車に乗り、たどり着いたチビタベッキア港は快晴、ちゃんと地中海の気候になっていた。港には10万トン級の大型クルーズ船が数隻停泊している。その中に極めて小さなそれでいて何ともいえないオーラを放つ小型船が1隻、それがシードリームT。シードリーム・ヨットクラブ社は創業からわずか10年余りで小型船ブティッククラスの頂点に登りつめた、真のラグジュアリークルーズ会社。
世界中にVIP顧客を持ち、彼らに最高のバカンスを提供する。クルーズ船の実力の指標となる「ベルリッツ・クルーズガイドブック」では、小型船部門(船客200名以下)第1位、第2位を独占している。
午後2時乗船、冷えたおしぼりとシャンペンでお出迎え、プールサイドのデッキチェアに座ると、スパで働くレディーが首から頭にかけて即席のマッサージをほどこしてくれる。日本からローマへの長旅の疲れもおかげでやわらいだ。
午後6時出港。数々の大型船を下から見上げるようにしてローマの港を後にする。
今回のクルーズでは、イタリアンバカンスの究極ともいえるリビエラ海岸とカプリ島やシチリア島を巡り、その後コリント運河を抜けてエーゲ海へと向かう、ヨットスタイルの船にとって最高のコース。それゆえこのクルーズは全室完売という人気ぶりだ。
数あるクルーズ船の中でこの船の船客はなぜこの小さな船を選ぶのか?その答えは、
せっかくのバカンス、どうせなら最高の船に乗りたい。
ジェットスキーなどマリンスポーツを満喫したい。
キュナードライン時代の「シーゴッデス1」の時からずっと乗り続けている。
など、様々であった。
ヨットスタイルの船旅とは、あたかも自身が高級メガヨットのオーナーであるかのようなプライベート感覚溢れる船旅のことである。ある意味ヨットオーナーの方は、ご自身の愛艇に最も近い雰囲気のクルーズ船とお考えいただきたい。
つまりみなさんは高級メガヨットのオーナーで、そのヨットでイタリアのリビエラ海岸あたりをセーリング、お抱えシェフが創る極上のディナーにシャンパンとキャビアの毎日。
ずばりミリオネアの船旅と言えるかも知れない。たとえ本当にミリオネアでなくとも、この船に乗っている間はあたかも本当にミリオネアになったかのような気分に浸れる。 今宵のディナー、アボカドと海老のタルタル、レンズ豆のスパイシースープ、ビーフフィレ、スフレ。 共に注がれるワインもいい香りがする。
シードリームTのいちばんの売り、それはクルーのサービスである。船客112名に対し95名のクルー、つまりほぼマンツーマンのパーソナルなサービスが期待できる。
常に笑顔で船客のどんな要望にも答えてくれる。彼らの目指すサービス水準は、普通のクルーズ船のそれをはるかに上回る。なぜならそのレベルを期待する上顧客を相手にしているからだ。シードリームTのクルーズ代金はけして安くはない。しかしそんな上顧客たちにとっては、お金よりも過ごす時間の質が問題なのである。つまり1秒たりとも無駄にすることなく、最高のバカンスをこの船に期待するのである。そしてこの船の船客の特徴は、高級船でありながら、年齢層が若い方も乗船していることだ。40代が最も多いというのは他のラグジュアリー船ではありえないこと。シードリーム・ヨットクラブはフォーマル不要、毎日カジュアルな服装で過ごせ、船尾のマリーナからジェットスキーなどアクティブな遊びも用意されていて、それが40代というやや若い世代にも受けているのだ。
明日からカプリ、ポジターノ、アマルフィを巡る。世界で最も美しいといわれる海岸線。それを陸から訪れるのではなく、海から訪れる、たぶん目を見張るような美しい景色に出会えることだろう。
5/12 カプリ
朝、シードリームはカプリ沖に到着。しかしやや波がありここでテンダーボートに乗り移るのは難しいと判断、キャプテンは船を島の反対側へと持ってゆく。船乗りの勘が働くのだろう、そこは風も波も穏やか、ようやくシードリームTはアンカーを降ろした。
残念ながら青の洞窟へのツアーは中止となった。今回で2度目のカプリだが、未だ見れていない。またいつか、訪れた時の楽しみとしておこう。
テンダーボートに乗り、カプリの街で降り、は山の上まで登ってみる。
この島の名産はレモンで、レモンのリキュールやアイスクリーム、レモンの石鹸などのお土産品が並ぶ。
昼は船に戻ってトップサイドレストランでランチ。ここは屋根はあるのだが、側面はアウトドアになっていて心地いい風が通るようになっている。こういったアウトドアの巧みなパブリックスペースが随所にあって、いかにもヨット系の船らしい。
前菜やデザートはビュッフェスタイル、メインディッシュはメニューから選ぶと出来立てが運ばれてくる。カプリの風に吹かれ、冷えたロゼワインとともにいただくバカンス気分のランチ。今最高級船の洋上にいてここはカプリ沖。なんだかあまりにもシチュエーションがはまりすぎている感じがする。
午後、船尾のマリーナからジェットスキーにチャレンジ。スロットルを開けてゆくと恐怖感をおぼえるほどの加速。しかし普段は横浜で朝から夜までオフィスにこもり、夜は本牧のバーへ繰り出すという単調な毎日を送る身には、時にはこういった刺激を与えるのもいい。
夕方、スコールがデッキに叩きつける。キャプテン主催のウェルカムパーティーが予定されていたが、急遽屋内のラウンジで開催された。ノルウェー人キャプテン、スモロースキーさんが主要なクルーを紹介、その中の一人クラブディレクター(他船ではホテルマネージャー)のピエールはピアースブロスナン似の陽気なナイスガイ。なんとアフリカ出身である。今回のクルーズの乗船客99名、アメリカ人が57名で最多、日本人は6名、リピーター率は48%。皆さん素晴らしい方ばかりである。人となりは様々な局面で振る舞いとなって表れる。例えばレディーファーストでなければならないときや、「お先にどうぞ。」の気持ち。みんなで楽しい時間を過ごそうというちょっとした団結力など。一流の船には一流の船客が集い、彼らの振る舞いがその船のCLASSを作り上げてゆく。シードリーム・ヨットクラブはそんな上質な客層が集う数少ない船社のひとつである。
5/13 アマルフィ
昨夜から停泊していたポジターノから1時間で到着。憧れのアマルフィへやってきた。
船からアマルフィの街を眺めてみる。極上のリゾート地らしい雰囲気を感じる。
アマルフィの沖合いには、シードリームT、ル・ポナン、シルバーウインドといった、小型高級船が集う。斜面いっぱいにレモン畑が広がり、建物が寄り添うように危うい感じで建っている。奇跡の街とでも言おうか。テンダーボートで上陸、地元のバスでラベッロへ向かう。ここは毎年音楽祭がある。最近歳を取ってきたせいか、休憩を時々とるようになった。カフェで家人とカプチーノをいただく。初夏だけど風が涼しく、ホットのカプチーノが美味しい。帰りのタクシー、ドライバーがポジターノへ行くとソフィアローレンの別荘があると教えてくれた。アマルフィで小船を借りて西へ向かう。するとちょっとした半島の先にその別荘はあった。瀟洒なたたずまい。専用のヨットハーバーもありエレガント。
イタリアを代表する大女優に相応しい、それでいて絢爛ではないセンスのいい別荘であった。半島の向こうはポジターノ、ソレント、ナポリへと続いている。ここイタリアのリビエラ海岸はフランスのコートダジュールと並んで、世界で最も美しい海岸線であることは間違いないだろう。ついでにといっては失礼だが、小船の船長はアマルフィの東へも案内してくれ、そこにはロジャームーアの別荘、シンプルだがモダンで上品。彼も今ここで静かな生活をしているのだろう。
今宵のディナーは、なんと日本食のフルコース。聞けば乗り合わせているエグゼクティブシェフがこのクルーズの前にNOBUのシェフから学んだとのこと。お刺身から焼き物、揚げ物と続き、お箸を流暢に使いこなす我々日本人のテーブルは、まわりの船客の注目の的であった。
JAPANESE
DINNER
5/14 タオルミナ
シードリームTは、シチリア島のタオルミナに到着、沖合いにアンカーを下ろした。
南イタリアの青い空が出迎えてくれた。
テンダーボートで上陸。海岸線の道を歩いてゆく。レストランがお色直し、これからのバカンスシーズンのために準備に余念がない。今はまだのどかな田舎町といった風情だ。日差しが少し強くなってきた。気がつけばけっこうな距離を歩いてきた。少し喉が渇き、ポケットの小銭でコーラを買い求める。床屋、衣料品店、雑貨店などが並ぶ通りを歩きながら、地球の裏側にもそれぞれの営みと暮らしがあることがとても不思議に思えてきた。
私は大阪で生まれたが、将来必ず東京へ出たいと強く願った。この地の人は、ローマやナポリへ出たいと思うのだろうか?
ランチの後、プールサイドのデッキチェアに寝そべる。この船の船客はとにかくあくせくしない。ゆったりのんびりと、思い思いの時間を過ごす。日差しを求めて北欧から来た人は、日光浴を存分に楽しむ。はたまたサングラスに大きなつばの帽子をお召しのご婦人は日焼けはお嫌いのようだ。今日もジェットスキーでアクティブなマリンスポーツを楽しむ若手の船客もいる。この船に乗船する人たちは自分でオリジナルの船旅を作り上げてゆく。
シードリームTのキャプテンはベルギー人で15歳で船乗りになった。カーゴやコンテナ船などを経て、クルーズ界へ。そして大型船を経て、自分は小型船が好きなことに気づき、以来シードリーム・ヨットクラブで10年働いている。
夕方、プールサイドにセットされるオードブルは寿司、同社CEOボブ・レピストは無類の寿司好きである。数年前来日したとき、築地にご案内したが、本場の寿司の美味さに驚いていた。
シードリーム・ヨットクラブはオールインクルーシブなため、食事時のワインも無料である。しかしワインに精通した方は、それでもあえて有料のワインを注文する。
ディナーは、フレンチが主だが船客を飽きさせないため、日本料理やアジア料理も供される。今日のスパイシーなトマトスープ、インド・シュリンプカレーも大変美味であった。
ディナーの後は、セルビア人の妖艶なディーラーに誘われカジノへ。しかし今日はツキが回って来ない。ほどほどにして明日以降に備える。
5/15 ケファロニア島
イタリアの南端を越え、アドリア海に浮かぶギリシャの島、ケファロニア島までやって来た。
今日は、シードリーム・ヨットクラブ社名物のイベント「シャンペン&キャビアスプラッシュ」がプールサイドで行われた。このイベントは簡単に言えば、シャンペン飲み放題、キャビア食べ放題のイベント。そんなちょっとクレイジーなイベントにアメリカの超越した富裕層のライフスタイルが垣間見える。この船に乗る人はありきたりのことでは驚かない。フォーマルなパーティーも日常茶飯事、つまりパーティーにも飽きている。だから彼らは全然違う刺激を求めている。シードリーム・ヨットクラブはそれに応えることが出来る数少ないアッパー層向けのクルーズ会社である。名前は明かせないが、アメリカの有名な投資家やプロゴルファー、ハリウッド女優もVIP顧客に名を連ねる。安全で極めてプライバシーが守られるこの空間はお忍びにはうってつけなのだ。
キャビアパーティー
 
5/16 イテア
ギリシャのイテアに到着。ここからはデルフィの遺跡観光へのオプショナルツアーに参加する。少し寝坊してレストランにかけこみ、朝食の時間が10分ぐらいしかないとウェイターに言うと、「大丈夫大丈夫。ちゃんと食べて行って。 4分ボイルのゆで卵? OK、 2分で作るから!!」とのこと。そんなちょっとした掛け合いもこの船のクルーは楽しませてくれる。
 曇り空の中バスは、パルナッソス山を登ってゆく。
デルフィ遺跡は古代ギリシャの聖地であり、19世紀末までは小さな村の下に埋もれていて、その存在は知られていなかった。当時デルフィは世界の中心と考えられ、人々は神託への感謝の念からいろいろな貢物を捧げました。ブロンズの御者の像、スフィンクス、ローマ皇帝が納めた像などの美術品がアポロン神殿までの道を飾りました。神々が宿る、この地に吹く風にそれを感じたような気がした。
昼過ぎにイテアを出港、シードリームTはコリント運河へと向かう。この運河は19世紀末に完成し、イオニア海からギリシャの首都アテネの外港ピレウスへと貫く。全長6キロ、幅23m、高さ80mの断崖に囲まれた細い運河を約1時間かけて通行する。パイロットが乗り込み、タグボートが牽引し、シードリームTもエンジンを使いながら航行してゆく。この船では、こんな緊迫した時でさえ、船客はブリッジに自由に出入りすることが出来る。船上ではシャンパンが振舞われ、船客とクルー全員でお祭り騒ぎ状態。
コリント運河通過というとてもエキサイティングな時間の先には、エーゲ海が広がり、アテネまですぐの距離である。
今夜のディナー、不思議なスープが出た。白色のトマトスープ。なぜこれがトマトスープなのか? 一晩かけてトマトのエキスを抽出したものをベースにしているのだ。不思議だけどとても美味しい。手間隙を惜しまず、最高の料理を創り上げる。
Crinth Canal
Special Dinner
5/17 サントリーニ
断崖の島の上の部分だけに白い街が広がる。世界中からの観光客を魅了して止まないこの島に今日も大小さまざまなクルーズ船が集う。3000人以上が乗船する超大型船もあれば、シードリームTのようにたった112名の船もある。サントリーニには港がないため、各船ともテンダーボートでの上陸となる。こういうときに小型船はストレスがない。長時間待つことなくいつでも上陸が出来る。一方3000人乗りの大型船では上陸にも長蛇の列である。
フィラの街はお土産店やカフェが軒を連ね、活気がある。ここから見るエーゲ海はこの上なく美しく、どこまでも深く青い。夕暮れ時の色をワインレッドと表現する人がいるが、私はオレンジ色だと思う。日没時、空と海がオレンジ色に溶け合う一瞬がある。それがたまらなく美しい。
5/18 アテネ
シードリームTは世界有数の過密港ピレウスに入港。同じような小型高級船が並んだ。
ギリシャの島々を結ぶフェリーも多数停泊している。
ここからアテネ市街へはタクシーで約30分である。
ここピレウスで笑顔でキャプテンと別れの握手を交わし、笑顔で下船してゆく船客を見ながら、この船を選ぶ意味を考えてみた。
まず唯一無二の存在であること。創業以来クオリティにおいて一切の妥協を許さず、すべてにおいて最高を維持し続ける船会社であること。その志しをスマートにクールにそして温かみを持って船客とほぼ同数のクルーが実践してゆく。そのサービスはどこまでも心地よく、ある意味大人が甘やかされてしまい、ややもすれば多少わがままになってしまう。しかし彼らはそんなわがままを待っているとさえ思えるときがある。船客も素晴らしい人たちが世界中から集う。彼らのわがままには品格さえ感じるときがある。一流の人が集うとはそういうことだ。1年365日のうち、たった1週間だけでもいい。なんとか毎年この船に戻って来たいと強く願ってしまう。シードリームとはゲストを虜にしてしまう希少かつ孤高の存在である。



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