クルーズレポート
  
個人主義的レポート
SeaDream II
シードリーム2 (シードリーム・ヨットクラブ)
アテネ~コリント運河通過~ローマ
地中海クルーズ
2014年9月


 
 
 
日次  寄港地  国 入港 出港
9月13日 アテネ(ピレウス) ギリシャ   18:00
9月14日 イドラ島 ギリシャ 9:00 22:00
9月15日 コリント運河通過
ガラヒディ(デルフィ)
ギリシャ  
12:00

19:00
9月16日 フィスカルド(ケファロニア島) ギリシャ 8:00 13:00
9月17日 タオルミーナ(エトナ山)(シチリア島) イタリア 9:00 16:30
9月18日 アマルフィ イタリア 8:00 翌日7:30
9月19日 カプリ島 イタリア 9:00 18:00
9月20日 チビタベッキア(ローマ) イタリア 8:00  

今、日本では少しずつクルーズの人気が高まりつつある。そしてクルーズ船も様々な種類がある。おおむね初めてのクルーズは2000人以上が乗船する大型船を選ぶ。ではシードリーム・ヨットクラブのような船客112名の小型船はどういう人が乗船するのか?
まず上質な船旅を望む方、これは間違いないだろう。そしてパーソナルなサービス、船客同士やクルーとの語らい、より魅力的な寄港地、さらにはシードリーム・ヨットクラブの場合、クルーズ会社の格付けを行う某レーティング誌で最高得点を獲得しており、頂点のクルーズ会社の船に乗るというある種のステータスも感じていることだろう。
また、シードリーム・ヨットクラブには普通のクルーズ船とは違う「ヨットスタイル」という顔をもっている。ヨットスタイルとは、あたかも自身が本紙にも登場するような豪華プライベートヨットのオーナーであるかのような、贅沢かつプライベート感覚にあふれる究極の船旅である。私は2007年からこのヨットスタイルという新しいクルーズのスタイルを提唱してきたが、最近ようやくメディアでもこの活字が使われるようになってきた。ヨットスタイルの特徴は当然ハイエンドな船旅ではあるが、従来の高級船のようなフォーマルがないことだ。シードリーム・ヨットクラブに乗船する人はフォーマルを既に卒業している。それなりのクラスの人たちは日常の生活の中にブラックタイ&イブニングドレスといったパーティーなどが普通にあるため、クルーズ船の洋上だからこの機会にフォーマルを楽しもうという嗜好性はない。むしろ、せっかくのバカンス、そんなドレスコードなどに縛られず、心解き放たれる自由な旅を満喫したいと願っている。この世の中でお金よりも価値あるもの、それは時間であると考えている。
アテネを出て、イドラ島にアンカーを降ろし、プライベートヨットのように船尾のマリーナから海へ飛び込んだり、ジェットスキーを楽しんだり。夕暮れ時にはプールサイドに船客が集い、気の利いたカナッペとアペリティフ。キャビアとシャンペンの日もある。
3日目の朝、シードリームⅡはコリント運河を通過する。シードリームⅡの船幅ぎりぎりの運河を約1時間かけて通行する。この運河を通ることにより、エーゲ海からイオニア海へショートカットすることができる。現代の船は船足も早く大型化も進んでいるのでこの運河を通行できない、ないしは通行する理由がないかもしれない。シードリームⅡも実用性というよりはゴージャスかつ壮大なエンターティメントということで通過する。船客はこの贅沢な1時間のスペクタクルショーに興奮する。
コリント運河の先のイオニア海、明らかにエーゲ海とは海の色が変わった。
乗船4日目、シードリームⅡはギリシャのケファロニア島北端の小さな町、フィスカルドに到着した。
この島は、スピルバーグ、マドンナ、ジョルジオアルマーニなど、VIPがプライベートヨットで乗り付ける極上のリゾートアイランド。フィスカルドの海岸線には小奇麗なシーフードのレストランやセンスのいい土産物店が並ぶ。私はここからメリサニ湖への寄港地観光に出かけた。
海沿いのアップダウンがきつい道をバスが行く。穏やかなイオニア海、対岸の島、こんなところをヨットで走ればどれほど幸せな気分になれるだろうか。このツアーに同行の方はバイクが好きな方で、「この道をぜひバイクで走ってみたい。」とおっしゃってた。ツアーガイドは「今度この島を訪れるときは、10日ぐらいは滞在してほしい、とても魅力的なので。」と話していた。ちなみにこの島のガソリンはギリシャで最も高いらしい。バスに揺られ約1時間、高台から見下ろす美しいミトスベイ。それは今までに見たことがない海の色。聞けば海底の石灰質の白い石が光に反射してこんな色になるらしい。これまた美しい白砂のビーチには几帳面にデッキチェアが並び、下世話な海の家など一切ない。この島だけに滞在する旅、ちょっといいかもしれない。ミトスベイから15分程度でメリサニ湖に到着。地底湖だがその天井の一部が崩れ落ちて、そこから日の光が差し込む。中はとても涼しい。小船に乗り換えて湖を周遊、島の西岸から海水が流れるため塩水である。眺めてみるとどこまでもクリアウォーター、そのきらめきと透明度は地球の本来の美しい姿そのものである。
 シードリームⅡの洋上ライフに触れてみたい。約18㎡のキャビンはリビングルームとベッドルームに分かれている。大理石で覆われたバスルームにはシャワーとトイレ、洗面が完備。ブルガリのボディソープ、真っ白なタオル類は毎日取り換えてくれる。リビングのデスクは横長で大きく、野暮だがとても仕事がしやすい。この船はオールインクルーシブなので、シャンペン、ビール、ソフトドリンクなど、希望する飲み物を毎日冷蔵庫に補充してくれる。ルームサービスも無料。いい船はクルーズ料金は多少値は張るのだが乗ってからお金がかからない。
 朝と昼はビュッフェスタイル。清々しい風が通るトップサイドレストランでいただく。ビュッフェスタイルといってもメインディッシュはメニューから選び、出来立ての一皿を持ってきてくれる。朝はステーキ、エッグベネディクト、ホワイトオムレツ、フレンチトーストなど、昼はブイヤベース、ビーフストロガノフ、タイカレーなど多彩。そしてどれも絶品。ランチの前菜、新鮮な海老やカニを特製のカクテルソースでいただくと旨い。カクテルソースがあまりにも旨いので天才シェフに作り方を聴いてみると意外にも簡単。同量のトマトケチャップとホースラディッシュ、そこにレモン汁を混ぜ込むだけ。家人はこのカニ目当てに日本からポン酢を持参、冷えたロゼワインといただけば、これまた最高だ。
 シードリームⅡ最大の売り、それはクルーだ。明るくきびきびとよく働く。楽しそうに働く様がいい。ドリンクなど船客の好みを素早く憶え、振る舞いもかっこよくてスマート。船客をどんどん甘やかしてゆく。 シードリームⅡは最新鋭船ではない。それゆへハード面では近年の船に劣る部分もあるが、こういったクルーのサービスや食、コリント運河通行などのユニークな寄港地などの総合得点でNO.1の称号を得ている。つまり船が新しいだけでは満足度は得られないということだ。そして忘れてはならないのは、よい船旅とは、実はそこに集う良い船客が作りだすものだということ。そしてクルーの温かみある気の利いたサービス。つまるところ人は人に感動や喜びを憶え、それは最新のハードにも勝る。
シードリームⅡは、午後1時にケファロニア島を出港、イタリア南端から西地中海へまわり、シチリア島のタオルミーナを目指す。その先はアマルフィ、カプリと極上のリゾート地が続き、最後はローマへと続く。
シードリームⅡはイタリアの南端を回り、シチリア島のタオルミーナに到着した。
ここからアマルフィ、カプリと南イタリアの極上のリゾート地を巡る。
この地はいつも華やかできらびやかで、昔から最上級のバカンスの地として人々を魅了してきた。その海岸線の風景はたぶん100年前と変わらないのではないだろうか。
この船旅に出る前、日本でとある船の旅行雑誌の1ページに釘付けになった。それはこの地タオルミナのどこかで撮られた写真、映画グランブルーの海。たった1枚の写真に魅了される、それがプロの仕事というものだろう。朝食もそこそこにテンダーボートに乗り、この雑誌の風景を探すためタオルミーナに降り立った。こじんまりしたビーチにはパラソルが並び、多くの人がまだまだ夏を謳歌している。
シャトルバスで高台の旧市街へ向かう。雑誌片手に海岸線を歩きその光景を探してみる。
その場所はかつて修道院だった建物を改築したホテルのテラスにあった。
眼下に広がる海と稜線。間違いない、ここだ。
その同じアングルで私もシャッターを押す。しかし発色が全然雑誌のそれとは違う。そもそも同じ写真が撮れるはずがない、素人なのだから。それでもしっかりと目に焼き付けてきた。きっと忘れないだろう。
そのホテルのテラスでイタリアンのランチをいただいた。貝の味がしっかりと染み込んだボンゴレ、パスタがとても黄色く、シンプルな料理ながらも何かが全然日本で食べるのと違う。心地よい風に吹かれ、地のワインをいただき、ちょっと贅沢な時間を過ごした。
タオルミーナを出港し、この夜ストロンボリ火山付近を通過、溶岩が海まで流れている。ひとしきりその光景を楽しんだ後、アウトドアのバーで一杯やる。下のピアノバーでは今日も楽しそうな歌声が聞こえてくる。この船は我々112人のプライベートヨットである。
 朝目覚めれば、アマルフィの景色が目一杯広がっていた。またこの地に来れて幸せ。斜面にへばりつくように寄り添った古い建物、奇跡の街としか言いようがない。夕方のテンダーボートで上陸する。夜8時にミシュランの星を持つレストランに予約を入れたため、それまで目抜き通りを散策。レモンのお土産が多い。それでも時間が余ったので教会の中の椅子に腰掛ける。30分以上は座っていただろうか。とかく慌ただしくなる旅の中にそんな心静かな時間を持つと、旅の高揚感から来る疲れを一度リセットし、自身を冷静にしてくれるものだ。
そのミシュランの星を持つレストラン、味だけでなく盛り付けも繊細、それに伴うプロセッコ、赤白のワインも地元産だが料理との相性が素晴らしい。
シードリームⅡはここアマルフィに翌朝まで停泊している。だからどんなに遅くまで夜更かししても、シードリームⅡのテンダーボートは桟橋で待ってくれている。
翌朝、アマルフィを出港、約1時間半のクルージングでカプリ島に到着。お目当てはもちろん青の洞窟だ。過去2回見ることができず今回が3度目の正直。世界有数の観光地ということもありかなり混んではいたが念願かなって洞窟の中に入ることができた。古びた木のボートに寝そべり、船頭が並みの具合を見計らって、一気に洞窟に入る。その中は「どうしたらこんな美しい青色になるのだろう。」と思うほど神秘的で美しく、来た甲斐があったと大満足。
ランチを食べるため船に戻るテンダーボートに乗ると、いつかどこかで見たグレーのセンスいいデザインのプライベートヨットを発見、「どこで見たんだっけ?」必死で思い出してみる。そうだ、4年前フランス船ル・ボレアルの処女航海で訪れたカンヌだった。
今日のランチは大好物のブイヤベース。船に戻ってきて大正解。この船の食の水準に慣れてしまうと他の船では絶対に満足しないだろう。
夕暮れの中、シードリームはアンカーを引き上げ、最終地ローマへと向かう。
楽しい時間はゆっくりと過ぎてほしい、そう願う一方、どこかで最後の日を待っているような気もする。
旅の途中はあれも見たいこれも見たいと欲望がある。しかし最終日となればもう欲望の種はすべてなくなってしまい、いたって冷静でいられる。その冷静な頭でこの1週間を振り返ってみる。ギリシャではイドラ島、コリント運河、ケファロニア島を巡り、イタリアではタオルミーナ、アマルフィ、カプリを巡った。いずれの地も印象深く、その鮮やかな記憶は心の中に深く刻み込まれている。「最高のバカンスってあるんだなぁ。」と納得してしまう。ディナーの後、世話になったクルー一人一人に礼を言う。荷物をまとめ、ベッドにもぐりこむ。
下船地ローマの港、チビタベッキア。工場の煙突が見える。急に現実の世界へ引き戻されたようだ。港には22万トン5000人乗りの世界最大客船が泊まっている。その横を通る4300トン112人乗りの我々の船。まるで別世界の乗り物のようだ。
ここチビタベッキアでシードリームⅡはシードリームⅠと並んだ。まったくの姉妹船である。
最後にキャプテンと握手を交わし下船、迎えの車へ向かおうとすると、シードリームⅠから顔なじみのクルーが駆け寄ってくる。今年1月のアジアクルーズで世話になったフランス人、クリストフ。2年前のエーゲ海で世話になったクロアチア人、シルビオ。このサイズの船だからこそお互いがお互いの顔と名前を憶えている。だから再びシードリームに乗るとき、我が家に帰るような気分になる。
今日本ではシードリーム・ヨットクラブに乗船する方の中に、ヨットに乗られる方が増えてきている。彼らは大型クルーズ船には興味を示さず、自身の愛艇にもっとも近い雰囲気のするシードリーム・ヨットクラブを選ぶ。磨きこまれたチーク材のデッキ、手が届きそうなほどに海が近く、船尾のマリーナからマリンスポーツに興じる。ドレスコードやチップなど、クルーズ船のお作法にとらわれない自由なそして自分らしい船旅がシードリームなら実現する。
ヨットマンは風を感じることができる。いつも風をつかまえることを考えているからだろう。クルーズ船だってアゲインストの風に悪戦苦闘することもあれば追い風に乗ってすいすいと進むこともある。ヨットマンなら全身でそれを感じることができるだろう。
シードリーム・ヨットクラブは上質な船旅を好む方にも自信をもっておすすめしたい。
最高水準の食、酒、ホスピタリティ、クルーズアイテナリー。これだけの要素が揃っていればじゅうぶんだ。特にクルーズアイテナリー。今回のシードリームⅡのようにすべての寄港地がテンダーボートで上陸ということもある。それには理由がある。港があるということは人工化、文明化されているため、そこには本来の美しい自然はあまり残っていない。むしろ本当に素晴らしい場所には人間の手は及ばず、時に人間が手を出すことを止め、自然のままの形を残す。そんな場所にこそ素晴らしい景色が残っている。シードリームⅡは船客112名のスモールシップという利点を生かして人知れず美しい場所を贅沢に巡る。テンダーボートは多少不便だが、大型船のようにテンダーボートに乗るために長時間待つようなストレスもなく、テンダーボート上陸さえもプライベートヨットの1シーンといつしか納得してしまう。風に吹かれ海を感じ、ヨットライフを満喫する。そんな夢のような世界を夢で終わらせるか、そのシーンの中に自信が飛び込んでゆくかは、みなさんに委ねられている。
今現在、「夢のような船旅」が現実に存在することを最後にお伝えしたい。

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関連サイト:  シードリーム・ヨットクラブ


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