クルーズレポート
  
個人主義的レポート
LE DIAMANT
カンパニー・デュ・ポナン  ル・ディアマン
ニース〜バルセロナ〜バレンシア
2010年5月
 
何年ぶりだろうか、すごく久しぶりだけど確実に頭の中に記憶されているその船体が近づいてくる。
ル・ディアマン。
いや、ソングオブフラワーと言ったほうが通りがいいだろうか。
川崎汽船、ラディソンセブンシーズと渡り歩き、実は日本人にとても馴染み深い船。この船に思い出のある方もたくさんいることだろう。
冷えたシャンパンとカナッペがセットされたバルコニースイート。
船齢は経っているものの、エアコンの効きもよく、シャワーの温水も調子がいい。
歴代、よくメンテナンスがなされてきたことがうかがえる。
 
夕刻、ニースを出港。
とても小さな港、そしてプライベートクルーザー、ヨット、フェリー、客船がめまぐるしく入出港を繰り返すとても多忙な港。

風は、とても心地いい。絵のように美しいフランスのコートダジュール。ここニースにもエルトンジョンやショーンコネリーが別荘を構えるらしい。
ル・ディアマンは、ニース港を出た後、航路として向かうスペインとは逆に東へ向かい、美しいビルフランシュを航行してくれる。
4年前、巨大船で訪れ、テンダーボートで下船し、ニース&モナコ観光のツアーに参加した。
ツアーは楽しかったが、船に戻るテンダーは長蛇の列だった。
 
カンパニー・デュ・ポナンは、ガストロノミックシップ(食通の船)の異名を持つ。
フランス船社として、食は絶対に譲れない。
夜は、本格的フレンチのフルコースディナー、そしてフランス産のワインが注がれる。

野菜、魚問わず、みずみずしい季節の素材を取り入れ、その本来のうまみをなくさないよう、そっと料理する。例えばまとう鯛のグリル。正に魚料理のミディアムレアー。これ以上火を入れるとパサパサになる。これ以下では半生。絶妙な火加減に、バルサミコをベースとしたさっぱりしたソース。今回は、スイート専用のこじんまりしたダイニングでいただいたが、50人程度のゲストに集中できるからこそ、この丁寧な一皿が生まれることは間違いない。数千人が乗船するメガシップでは絶対に真似が出来ない。
カンパニー・デュ・ポナンのクルーズ代金には、昼と夜のワインが含まれている。だから魚には白、お肉には赤と、臆することなくどんどん頼めばいい。そして料理やワインのことなど何もわからなくても、「うん、この子牛には赤が合うなぁ。」とやっていればいい。

今回のクルーズはほとんどがフランスの船客だが、我々少数の英語圏の船客には、フランス人以上に気を使ってくれる。
洋上最高のダイニングマネージャーとウェイターを左記写真として紹介しておきたい。

これぞ、真のホスピタリティを実践してくれる。
絶品ディナーを堪能したら、妖艶なライティングのラウンジへ流れ、ピアノの演奏を聴きながらカクテルを一杯いただく。
何気ないことだけど、普段の生活ではなかなか出来ないことの一つだ。
ル・ディアマンは、最初の寄港地バルセロナへ入港。最新鋭メガシップから懐かしい船まで多種多彩な船が見える。

船客は、いつも入港時ワクワクしている。
キャプテン自らが操船。

バルセロナの日差しは明るく、船客の白いブラウスに降り注ぐ。
ソングオブフラワー、
いや、ル・ディアマン。
船尾の大型テンダーも健在。

この船を見ていて思った。
このサイズがちょうどいい。
クルーズ船は急速に大きくなりすぎた、と。
多彩なバリエーションのキャビンは、どれも本当にきれい。コンディションがよく、オレンジのカーテンやクッションが鮮やか。
この色使いがフランス船社の上手いところ。
バルセロナ出港の夜、キャプテン主催のウェルカムディナーが行われた。
シアターのエントランスで船客一人一人を丁寧にお出迎えするフランス人キャプテン。

主要スタッフが壇上に並んでのあいさつ。

そして、乾杯。

オーソドックスで、クラシックな船旅の一シーン。

最近は少なくなった。
朝食とランチはビュッフェスタイル。
ルームサービスも24時間OK。
フライドエッグを注文したら、マッシュルームとハムとオレンジのスライスが添えられていた。

朝食はいつも楽しい。つい欲張ってしまう。
地中海を西へ向かうル・ディアマン。
スペイン、カタルニアの日差しは明るく爽快。
フレンチフラッグも心地よくはためいている。

泳ぐにはちょっと早い季節。
夏のクルーズ、このプールサイドの華やぎを頭でイメージしてみる。
船齢を経た船に、最新のモダンなインテリアは望むべくもない。
配色など、古さを感じるのは当然のこと。

最近の船のような電光掲示板の海図などなく、紙の海図に手書きの航路が記されている。

暖かみのあるウッドパネルとよく磨きこまれた金色の手すり。
”往年の、、、”という言葉がふさわしいだろうか。
翌朝、ル・ディアマンは滑るように静寂のバレンシアへ入港。
ちょっと短い船旅に未練たっぷりで船を後にした。
食の宝庫、スペイン。
美味しいものがたくさんある国の市場は活気に溢れている。
つみたてのイチゴ、みかん、バナナ、パイナップル。
サラミ、生ハム、燻製類。
手作りのオールサーディン、アンチョビ、スモークサーモン。
旅を終えて

私よりもやや上の世代の方に、この船を懐かしいと言う方が多い。
船齢は経っている。お世辞にもスタイリッシュな船とは言いがたい。
しかし、ポナンというフランス船社はこの船を買い、その船内で繰り広げられる彼らのサービスはとてもこの船にしっくりときている。
ヨーロッパ船社の価値観は米系大手とは全く異なる。
彼らはこの船齢25年、8200トン、200人乗りのル・ディアマンという船をとても気に入っていると思う。そして船客も居心地がよさそうだ。

最新鋭の大型船に魅力を感じる一方で、
こういったスモールシップで展開される船旅にも俄然興味を持ち始めた。なかなか奥が深そうだ。

ル・ディアマン 詳細ウェブサイト  



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