クルーズレポート
  
個人主義的レポート
Silver Shadow
シルバーシャドー (シルバーシー)
韓国・釜山 〜 中国・上海 アジアクルーズ
2011年4月

 
 
4.29 Fri
 正午過ぎ、釜山の真新しいクルーズターミナルからシルバーシャドーへ乗船。
ターミナルでの乗船手続きなど何もなく、船のレセプションですぐにキーを受け取り、そのままスイートへ。
全室スイート仕様、スタンダードキャビンでも32uの広さ。大型船のジュニアスイートぐらいに相当する。キャビン、船内ともに落ち着いた色調は、いたってオーソドックス。結局こういった配色が最も落ち着くような気がする。
早速、ラ・テラッツァのビュッフェランチへ。
綺麗に並べられたビュッフェラインで好きなものを取ると、ウェイターがお皿を席まで運んでくれます。着席すると、今日のおすすめのワインがグラスに注がれる。
一口食べ、一口飲み、夫婦で顔を見合わせながら、「おいしいなぁ」と思わず口に出てしまい、幸せな時間だなぁ、と実感。
夕刻、シルバーシャドーは釜山を出港、上海まで9日間のクルーズが始まる。



4.30 Sat
 朝、ビュッフェで朝食を食べているとキャプテンのアナウンス、早々に済州島の抜港が決定。この日は終日航海日となる。
波が高く、しかもうねりがとても大きい。大西洋にも似た”恐さ”すら憶える。こうなると現代のクルーズ船は手も足も出ない。そもそも穏やかな海を走らせる洋上のリゾートホテルのようなものだから、荒波を少しでも早く乗り越えるような構造にはなっていない。車にたとえるならファミリーが楽しく乗っているミニバンのようなもの。デッキも高く積み上げるから上層階のいいキャビンほどゆれる。 そういう点では、QE2の走りは素晴らしかった。そもそもが移動の手段だから、大西洋の荒波も高速で駆け抜ける。細く長い船首が波を切り裂いてぐんぐん進んでゆく。低重心で300mの長い船体は、2ドアのスポーツカーにでも例えられるだろうか。
急遽、デイリープログラムが差し替えられ、ギャレーツアーに参加、デザートのお皿1枚ずつにチョコレートの飾り絵を作っている様が印象的。
 この日は、英国ロイヤルウェディングの日、メインシアターの大型スクリーンにBBCのライブ中継が映し出される。これが意外と見ていて面白い。
夕方、ようやく揺れも収まりだした。ザ・バーで一杯やる。この日は大盛況、みなさん楽しそうに談笑、ゆったりとした時間を過ごされている。ここで一杯やって、ディナーへ向かう。すごく古典的でオーソドックスだけど、これが洋上のナイトライフの正しい過ごし方だと思っている。
 現代の大型クルーズ船、どこに座ってもお金がかかる。そして船客の数も増えたため混み合うことしばしば。少し無理がある気がする。

 
5/1 Sun
 この日は、当初から終日航海日、大連に向けて北上する。この時期にして気温は8度と低い。全体にもやがかかった感じ。これが中国のクルーズというものか。
この日から、洋上だけの日課、軽い運動をスタート。デッキを歩いてジムで少し体を動かして。
元来、横浜にいるときはまったく運動をしないのだから、まずこの程度で始めるのがいい。あまり無理をしてはいけない。それでも少し体を動かして、サウナで汗を流せば、体が活性化され、休眠していた機能が動き出すのを実感する。そして、食事が美味しくなる。
この船のビュッフェの味は素晴らしい。とろけるようなスモークサーモン、サラダと5種類の自家製ドレッシング、ローストビーフなどのカービング、時にはチキンカレー、グーラッシュなどの煮込んだ料理、そして毎日お刺身と巻き寿司(巻き寿司は28点 (横浜・関内の写楽を100点とするなら)。さらにかなりの数種類のデザートが毎日用意される。
自分の好きなものを取れば、ウェイターが席まで運んでくれる。席に着けば、その日のおすすめのワインが注がれる。
ワインの気分でなければ、生ビールでも何でも持ってきてくれる。
食事の後は、隣のライブラリーで毎日配られる読売新聞の衛星版に目を通す。
原発問題で、与野党があいかわらず足の引っ張り合いをしている。何も変わっていない。
彼らは誰のために政治家になったのだろうか?
4:00PMからはパノラマラウンジでアフタヌーンティー。数種類の紅茶、ウーロン茶、ジャスミン茶などから選ぶとポットで丁寧に運んできてくれる。そして毎日作りたてのスコーンやサンドウィッチも用意されている。ゴールデンアッサムというお茶が美味しい。紅茶もなかなか奥が深い。
ちなみに、このパノラマラウンジで11:00AMから用意されるブイヨンというサービスが気に入っている。ブイヨンスープに好みでパセリやチーズを入れ、ティオペペう数滴入れて飲む。これが美味しい。地味だけどひそかな楽しみとなっている。
7:00PM、ベネチアンソサエティのリピーターズパーティが催される。
イタリア人キャプテンの挨拶、最高400泊以上にも及ぶVIPゲストへの祝福、軽いバンド演奏とともに、華やか、かつアットホームな雰囲気のパーティであった。シャンパーニュは2年前と変わらずドラピエ。なかなか日本では出会えない。
最初にドラピエを知ったのは、ル・レバンの洋上で。それ以来、辛口のドラピエが大好きになった。私程度でも「これは美味い」と思ってしまうほど美味しい酒。
軽いオードブルも振舞われるが、久々にキャビアをいただいて「キャビアって美味いなぁ」と。次の私の誕生日にはキャビアを買ってほしいと妻に変な注文をした。
一昨日お会いしたご夫妻と、4名テーブルでディナー。お二人のこれまでの旅のスタイルやクルーズへの興味など、楽しい話で盛り上がった。
5.2 Mon大連入港。向かいには鉄鉱石を積み込む超ボロボロの貨物船、窓ガラスが割れた建物、なんだかはっきりしないもやっとした天気。建設中の超高層マンション。すべてが今の中国を象徴している。
 朝、入国審査を受けるため、いったん下船。ギャングウェイには緑の軍服のようなものを着た警備の男が2人立つ。直立不動で微動だにしない。そして笑わない。
我々船客は、バスに乗せられ、800mはなれた審査場へ向かう。
入国審査の列に並ぶ。こういうところではおおよそカメラでの撮影や携帯電話の使用は控えた方がいい。にもかかわらずタイミング悪く私の携帯が鳴り、ちょっとにらまれる。やっぱりやめた方がいい。
入国審査を終えると、再び船に戻るバスに乗りる。「ちょっと、怖かったねぇ。。。」と夫婦で顔を見合す。 午後はシャトルバスで大連の街へ。

5.3 Tue 天津
シルバーシーは天津の真新しいクルーズターミナルへ接岸。見渡す限り何もない僻地。とりあえず、天津の市内へ行ってみようと、1台だけ止まっていたタクシーと交渉。約1時間半で天津市内へ。
急成長を続ける中国、しかし交差点にはたくさんの自転車も見られる。
ここ天津から高速鉄道に乗れば北京まで行けるが、我々はここで退散、
また1時間半かけて船に戻る。

今日から天津でオーバーナイト、大半の船客は北京市内のペニンシュラホテルに宿泊し、万里の長城などに行くオーバーナイトツアーに参加しているため、船の中はガラガラ。
おかげで、ディナーはラテラッツァでゆったりとイタリアンディナーをいただくことができた。
5.4 Wed 天津
夕刻、真新しい天津クルーズターミナルを出港、最後の寄港地上海へ向かいます。

5.5 Thu 終日クルージング
明日は下船地、上海。最後の終日航海日をしっかりと満喫しなければなりません。
朝食、たまにはメインダイニングに行き、メニューから好きなものを選んでゆったりといただきます。

夕刻からシアターで行われたフェアウェルパーティ。
シルバーシーのクオリティ高いクルーズライフを支えるのは、間違いなくクルーのサービス。そんな彼らが壇上に上がり、背後のスクリーンにはこのクルーズ中の思い出の写真が流れてゆきます。
いわば、シルバーシーは正統派クルーズ会社、しっかりとサービスで勝負する船会社。
結局、こういう会社に人は落ち着くのだと私は思います。

5.6 Fri 上海
久しぶりの上海入港シーン。相変わらず混雑の激しい港へのアプローチ。デッキから眺めているだけで、街の活気が伝わってきます。
ここ上海でオーバーナイトの後、下船となります。
このクルーズ中、ルームサービスで何度も頼んでしまったものがあります。
それはトマトスープ。しっかり裏ごしされていてトマトの酸味と少しクリーミーな味わいにハマッてしまい、最後の夜も頼んでしまいました。
このスープ、絶対的に美味しい。


5.7 Sat 上海
今の中国の勢いを象徴するかのような高層ビル群。
朝起きて気づいたのですが、7年前に訪れたときは荒れ果てた土地だった港には高級マンションが建ち、緑の芝生が整備され、犬を連れてのんびり散歩する人たちが見えます。
この国はとても豊かになってしまったのですね。まぁ一部の人かもしれませんが。

今回のシルバーシャドー、この時点では私にとって過去最高の船旅となりました。
シルバーシーは、最高峰の船と言われていますが、28000トンは現代では小さい部類で、大型船のようにパブリックスペースが多数あるわけではありません。
だからクルーズの前半で船のレイアウトを完全に把握し、すべてのパブリックスペースを経験してしまうため、あとは自身がこの船でどう過ごすか、が鍵となってきました。船内のイベントはそれほど多くはありません。じゃぁ退屈なのか?と言えば、私には全然退屈ではありません。大型船に比べパブリックスペースが少ないにもかかわらず、どこもなぜか居心地がよく、そこで本を読んだり、アフタヌーンティーに出かけたり、ブイヨンサービスを楽しんだり、プールサイドでハンバーガーとビールだったり、夕食前にバーで一杯やったり、部屋にウイスキーを運んできてもらったり。
退屈どころか、やりたいことがどんどん出てきて、あっという間に夜になってしまうのです。普段忙しくて出来ないことなど、この機会にと満喫しました。その満足度が過去最高の船旅となったのです。
最高の船旅に、革新的なハードは必ずしも必要ではなさそうです。
むしろ、船に乗って何をしたい?、どう過ごしたい?、をガンガン推し進めることがポイントだと感じました。
そしてシルバーシーの場合、オールインクルーシブなどとスマートなフレーズで表現されますが、要は”飲み放題”の船でありまして、”飲みつくせ!”、”美食を食べつくせ!”、と欲望のままに過ごせばいい訳です。
最近の巨大船、バーやラウンジが20箇所、レストランが10箇所以上、船内を歩いて「うわぁスゴイなぁ。」と見て回ってるだけで1週間が過ぎることがあります。いや1週間乗っていてもすべてを掌握できないこともあります。
船を掌握せずして、自分の船旅にはたどり着けないのではないでしょうか?
それは、やや若くない者の考えでしょうか?
仕事柄、幸運なことに毎年船旅を楽しんできましたが、ここに来て過去最高と言える船旅に出会えた喜びはとても大きな出来事です。
お客様のクルーズ選びをお手伝いする時、「何に乗る?」「どこへ行く?」からだいたい始まりますが、さらに「船で何をしたい? どう過ごしたい?」なんかもお尋ねしてみようかと思っています。
 
美食とワイン
 
優しいトーンの船内とスイートキャビン
 
洋上のリゾートシーン
 
ギャレーディナー




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