クルーズレポート
  
個人主義的レポート
Volendam
フォーレンダム (ホーランドアメリカライン)
日本寄港 取材乗船
2014年4月

 私にとって、格別に思い入れの深い船会社がある。ホーランドアメリカライン。オランダの船会社として創業、
その社名のとおりオランダとアメリカを結ぶ定期航路からスタートした。
時が流れて移動の手段が船から飛行機に取って代わり、その苦肉の策もあってクルーズ船への転用が各社で始まった。
ここ数年、日本を訪れる外国船は急激に増えた。日本のクルーズマーケットの拡大、外国人にとって日本はとても
魅力的なデスティネーションであることなどの要因が挙げられる。
ホーランドアメリカラインは現在46歳の私の人生とのシンクロする限りにおいては、40年前から既に日本に寄港していた。
同社のロッテルダムという船がとても有名で世界中にこの船のファンが存在する。美しい船体デザイン、
当時の客船では群を抜く内装の豪華さ、まさに憧れの船であった。

ホーランドアメリカラインは140年の歴史を誇る老舗の名門船社。現在は米国シアトルに本社を置き、
主たる船客はアメリカ人、リピーター率が非常に高くクルーズファンから強い支持を得ている。

 今回乗船の機会を得たフォーレンダムは、1999年就航、約61000トン、船客定員は約1400名。
現代のクルーズ船の中では中型船に属する。

とかく大きい船ほど“豪華客船”と日本では思われがちだが実は違う。
むしろ逆である。小さい船ほどあらゆる面においてクオリティが高くなり、丁寧なサービスが期待できる。
その分クルーズ料金も高くなる。10万トンを超え、数千人が乗るような大型船はクルーズ料金はリーズナブルであるが、
乗下船時、朝食のビュッフェラインなど長蛇の列ができ、そういった混雑から来るストレスがどうしても生じる。
ホーランドアメリカラインの船は4〜8万トン、船客定員も抑えているので船内には落ちついた雰囲気があり、
パーソナルなサービスも期待でき、クルーズ料金もこのクオリティにしてはリーズナブルである。

また元来ロングクルーズを得意とする船会社なので、他社に比べキャビンが広い。しかも通常船のキャビンはシャワーのみだが、
同社の船はバスタブが標準的に付く。これは日本人にはとてもうれしい。

 今回乗船したフォーレンダム、船内に足を踏み入れしばらく歩いてみれば、この船が一級品の客船であることが感じ取れる。
まず質感。デッキは綺麗に手入れされたチーク材が敷き詰められ、コンクリートや合成素材のデッキとは気分が全然違ってくる。
船内のバーやラウンジに飾られる花はすべて生花。シンガポールやインドネシアから北上してきたときなどは、
トロピカルな色鮮やかな花がきれいに飾られる。

 キャビンのリネン類、ベッドのシーツや枕、タオル類も上質なコットン製。ボディソープやシャンプーはエレミス製、
とてもスーッとしてカリブ海など暑い所で寄港地観光から戻り、シャワーでエレミスを使うとさっぱりする。
またベッドのマットレスがとても分厚く、その分ベッドの位置が高いのだがとても寝心地がいい。

 フォーレンダムのパブリックスペース、一言で言うと“船の造り方を知り尽くしているプロの仕業”、
そう強く思わせる風格がある。特筆すべきはデッキ5、船の中心にある3層吹き抜けのアトリウム、
その中心にはベネチアンガラスの煌びやかな柱があり、
アトリウムの周りにはジャズの生演奏が聴けるオーシャンバー、
船の後方へ歩を進めてゆくと、左手にショッピングアーケード、右手にピアノバー、
さらに進んで左手に上品な宝石店、クラシックの演奏を聴きながら食前の一杯にちょうどいいエクスプローラーズラウンジ、
そしてこの船のメインレストランであるロッテルダムダイニングルームへと続く。
このストリートは実に巧みにレイアウトされ、それぞれのバーやラウンジをあまり仕切っていないので解放感もある。
このストリートはデッキ5の右舷側だが左舷側も素晴らしい出来栄え。カフェからライブラリーへと続くとても
上質なスペースになっている。ライブラリーには大きな革張りのソファがあり、落ち着いたライティングデスク、
オットマンのあるリクライニングチェアなど、見事なインテリア。またこの船のカーペットや椅子、
濃い紫や鮮やかなオレンジなど、独特な色遣いを見せる。素人がやるととんでもなく下品になりそうだが、
これら難しい配色を斬新かつ上品に上手く使っている。非常に高度なテクニックと言えよう。
最上階のプールは客船としては珍しく開閉式の屋根がついている。同社の船は世界中に配船されているが、
最も得意とするアラスカを強く意識している。アラスカは山の天気のように変わりやすく、夏でも気温が急に下がったり、
曇りの時もある。それでもこの開閉式ドームがあればホットジャグジーに入ってアラスカの地ビールで一杯やりながら
壮大な氷河を見ることができる。ホーランドアメリカラインに乗る機会があればアラスカを最もお奨めしたい。
もう一つ挙げるならカリブ海。同社はなんとカリブ海にハーフムーンケイというプライベートアイランドを所有している。
皆さん頭でイメージできるだろうか? 例えるなら商船三井客船が伊豆大島を所有しているようなものである。
そのスケールの大きさに驚かされる。その他、プエルトリコのサンファン、グランドターク、セントトーマスなど、
特に東カリブ海をお奨めしたい。ホーランドアメリカラインの船は船体の色が黒に近い濃紺。伝統ある船会社が使う色だ。
カリブ海で見ると真夏に厚手のコートを着ているようでちょっと暑苦しいのだが、そこがまたカッコよく見えてしまうのだ。

 今回の乗船では食とエンターティメントに注目してみた。ある晩ピナクルグリルという特別レストランに行ってみた。
通常クルーズ料金には基本的な食事は含まれているのだが、特別レストランではわずかな追加料金でかなり美味しい
食事がいただけるので、それはそれで行く価値がある。ピナクルグリルは言わばステーキの名店で、立体的なフィレ、
500グラムの
Tボーンなど、東京で食べたらかなりするだろうと思われる上手いステーキがわずか29ドルで食べられる。
ブルガリの食器とリーデルのワイングラス、店自体の佇まいからして高級グランメゾンの趣がある。
本音を言えば29ドルでこんな上手い料理が食べられるのなら毎晩でも通いたいぐらいだ。メインダイニングでの朝食、
窓際の明るい席をあてがってくれた。エッグベネディクトとベリーのパンケーキを注文。
アメリカ船ではこういうアメリカの食べ物が旨い。それに香り立つコーヒーとフルーツ。まぁ朝からよく食べること、
なぜか船に乗ると食欲が増進する。ランチはプールサイドのグリルでチーズバーガーとバドワイザー。
隣接するビュッフェから巻寿司をちょっともらってきたりとやりたい放題。全然
OKである。

 エンターティメント、横浜停泊の夜は大半を占める外国人船客を楽しませるために
琴の演奏と日本舞踊「
Traditional Japan Music & Dance」が催された。
それはそれで日本人にも楽しめるのだが、次の日のブロードウェイスタイルのショー
Back to Broadway」はさらに迫力もあって素晴らしかった。
さすがエンターティメントの国アメリカの船。

 いい船旅は誰が作るのか? 素晴らしいハード、高級食材を使った美食、
それも間違いではないだろうが、最も大切なことは船客そのものではないだろうか?
 ホーランドアメリカラインの洋上は優しく幸せな雰囲気に満ち溢れている。
特に今回乗船したコースは横浜からバンクーバーへ向かう17日間のロングクルーズ。
1週間程度のクルーズとは全然違う空気が流れている。
「まだまだ先は長い、何も焦ることはない。今日できなければ明日やればいい。」
その気持ちのゆとりが他人への優しさに変わる。例えば船内からデッキへ出ようとすると、向こうにいた船客が扉を開けて「お先にどうぞ」と促してくれる。
また、ライブラリーの一角で大きなジグソーパズルをやっているおばさま3人組。
その様を除いていると「ちょっと、見ていないで手伝いなさいよ!!」と強引に引き寄せる。それも愉快。
ホーランドアメリカラインの船客はそんなすばらしい船客ばかり。きっとバンクーバーまで乗っていれば、別れがたい、またの再会を願う一体感が生まれていることだろう。

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海側窓付スタンダードキャビン
 クルーズ船の標準的なキャビンとしてはかなり広め。ソファも大人3人目が寝れるほどの長さがある。
 他社では標準的なキャビンはシャワーのみだが、この船ではバスタブが備わる。
メインダイニング
エンターテイメント     



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